ECの管理画面を開けば、今日の売上はすぐわかります。
ところが「で、いくら儲かっているのか」となると、答えられないまま月末を迎えている——という運営者は少なくありません。
私たちも自社でECを運営していて、長いあいだ同じ状態でした。
売上は毎日見ているのに、粗利は月末に会計ソフトへ数字を入れてからでないとわからない。
この記事では、なぜそうなるのかと、粗利を毎日見える状態にするために何を変えたのかを書きます。
目次
なぜ売上は見えるのに、粗利は見えないのか
理由ははっきりしています。
売上は1か所にあるのに、粗利の計算に必要な情報は複数の場所に散らばっているからです。
- 売上:ECカートの管理画面にある
- 仕入原価:仕入先の請求書、または自分で作った原価表にある
- 送料:配送業者の請求で、月末にまとめて確定する
- 決済手数料:決済代行の管理画面にある
- 広告費:広告の管理画面にある
- モール手数料:モールの管理画面か、翌月の支払通知書にある
粗利を出すには、この6つを注文単位で突き合わせる必要があります。
手作業でやろうとすると、1か月分をまとめて処理するしかありません。
「月末にならないとわからない」のは、担当者の怠慢ではなく構造の問題です。

月末にしかわからないと、何が起きるか
赤字の商品を売り続けてしまう
送料と決済手数料を引いたら利益がほとんど残らない商品は、どのECにもあります。
売上ベースで見ている限り、それは「売れている商品」に見えます。
気づくのは、早くて翌月です。
広告の止めどきを間違える
ROASだけを見て「合っている」と判断していても、粗利で見ると赤字ということがあります。
逆に、ROASが低くてもリピート率の高い商品なら継続すべき場合もあります。
粗利がわからないと、この判断ができません。
値上げ・値下げの根拠がない
原価が上がったとき、いくら値上げすれば元の利益率に戻るのかが即答できません。
結果として、値上げのタイミングが遅れます。
いずれも「損失に気づくのが1〜2か月遅れる」という同じ問題です。
その間に流れた分は、後から取り戻せません。
粗利を毎日見えるようにするために変えたこと
1. 原価を「商品マスタ」に持たせる
最初にやるべきはこれです。
注文ごとに原価を調べるのではなく、商品ごとの原価をあらかじめ登録しておき、注文が入った時点で自動的に引き当てる形にします。
仕入価格が変動する商品は、移動平均(仕入れるたびに平均原価を更新する方式)にしておくと実態に近づきます。
輸入品のように為替の影響を受ける場合は、仕入時のレートも一緒に記録しておくと、後から「円安でどれだけ利益が削られたか」を追えます。
2. 送料と決済手数料を「注文単位」で持つ
月末の請求書を待たずに、注文が発生した時点で概算を計上します。
配送サイズごとの送料表と、決済手段ごとの手数料率さえ決めておけば、実績とのズレは数パーセントに収まります。
完璧な数字を月末に得るより、おおよそ正しい数字を毎日見るほうが、経営判断には役立ちます。確定値は月次で突き合わせて補正すれば十分です。
3. 広告費を売上と同じ画面に置く
広告の管理画面と売上の管理画面が別だと、人はまず見ません。
広告費を自動で取り込み、売上・粗利と同じ画面に並べるだけで、判断の質が変わります。
4. 「粗利がマイナスの注文」を一覧で出せるようにする
全体の粗利率だけを見ていると、問題のある商品が平均に埋もれます。
注文単位・商品単位で粗利を並べ替えられるようにしておくと、赤字の原因が数秒で特定できます。
手作業でどこまでやれるか
いきなりシステムを入れる必要はありません。
月間の注文が数十件までなら、表計算ソフトでも成立します。
商品マスタに原価を持たせ、注文データを書き出して突き合わせる形です。
破綻するのは、次のいずれかに当てはまったときです。
- 注文が月100件を超えた
- 販売チャネルが2つ以上になった(自社EC+モールなど)
- 原価が変動する商品を扱っている
- 担当者が自分以外にもいる
このどれかに当てはまると、転記の手間よりも「転記ミスに気づけないこと」のほうが問題になります。数字が信用できなくなると、結局また月末の会計を待つ運用に戻ります。
まとめ
- 粗利が見えないのは、必要な情報が6か所に分散しているという構造の問題
- 月末にしかわからないと、赤字商品・広告の止めどき・値上げ判断がすべて1〜2か月遅れる
- 原価を商品マスタに持たせ、送料と手数料を注文単位で概算計上すれば、毎日見える状態にできる
- 完璧な数字を待つより、おおよそ正しい数字を毎日見るほうが経営判断には役立つ
まずは自社がどの段階にあるかを把握するところからです。
下の診断で、いまの運用にどれだけ時間がかかっているかを確認できます。
いまの運用で、どれだけ時間を失っていますか。
6つの質問に答えるだけで、月間の管理作業時間と年間の人件費換算がその場でわかります。